料理を引き立てる薬味の数々【薬味の種類】
料理の引き立て役として使われる薬味には様々なものがあります。
香りの良い野菜、食材を混ぜ合わせたり乾燥させたりして加工したもの、香辛料としても使われるものなどが薬味として使われています。
ここでは、薬味の種類について紹介していきます。
薬味の種類
薬味を分類する時には、その分類は薬味となる食材の形状や部位などを切り口として分けられます。
薬味と聞くと、日本独特の食習慣というイメージが強いですが、実はそうではありません。
大きく分けると、薬味の食材は、葉などを中心とした野菜類、ミカンなどの果物の仲間の柑橘類、植物の根の部分を食用とする根菜類、種子類などにスパイスとしても使われる香辛料が加わったものが主なものです。
これに、加工食品に手を加えたものも薬味として使われることがあります。
野菜類の薬味
薬味に使われる野菜は、主に葉や茎の部分を使います。大抵は、生のまま水洗いしたものをそのままか刻んだりして使います。野菜類の薬味は緑色の鮮やかなものが多く、彩りを添えるのにも一役買っています。
日本で一般的に使われる野菜類の薬味には「オクラ」「貝割れ大根」「しそ」「たで(蓼)」「ねぎ」「あさつき」「わけぎ」「三つ葉」「みょうが(茗荷)」「ニラ」などがあります。
特に刺身のツマに使われる「つまもの」には、「大葉(青じそ)」「穂じそ」「たで」などがあります。
また、春先に収穫される「ふきのとう」「行者ニンニク(アイヌネギ)」などの「山菜」も薬味として使われることもあります。
最近では、蕎麦や豆類を発芽させたスプラウトと呼ばれるものを薬味とする場合もあります。「貝割れ大根」もこの仲間です。スプラウトには「豆苗(エンドウ)」「ブロッコリースプラウト」「マスタードスプラウト」「ルッコラスプラウト」「蕎麦の貝割れ」などがあります。
柑橘類の薬味
ミカン科の植物の果実はさわやかな芳香が特徴的で、料理にさわやかな風味をプラスしてくれる薬味です。
香り高い皮の部分や果汁を使うのが一般的です。
柑橘類の薬味には「ゆず」「かぼす」「スダチ」「シークヮーサー(ヒラミレモン)」「レモン」「ライム」などがあります。日本食の薬味としては「ゆず」「かぼす」「スダチ」の3つが定番ですね。
根菜類の薬味
薬味の定番として使われることが多いのが根菜類です。
根菜類の薬味には、「しょうが」「わさび」「にんにく」「ホースラディッシュ」「ダイコン(大根おろし・もみじおろし)」などがあります。これらは、生のまますりおろして使ったり、刻んだりして使われます。
「しょうが」「わさび」「にんにく」は、乾燥させたものを細かくして香辛料としても使われています。
種子類の薬味
種子類で薬味として使われるものは、乾燥させた状態で使うことが多いです。
種子類の薬味には、「ごま」「くちなし」「芥子の実」「ピーナッツ(落花生)」「クルミ」「松の実」などがあります。
種子類の薬味は、脂質を多く含むので、あまり多く使うとしつこくなりがちですが、ナッツ類は香りが大変よく、香ばしさをプラスできるので、アクセントとして使うのがおすすめです。
ごまなどの小さい粒のものはそのまま使うことも多いですが、それ以外のものは、砕いたり刻んだりして小さくしたものが使われます。
香辛料の薬味
香辛料として料理に使われるものには、薬味として使われるものも多くあります。
香辛料の薬味には、「唐辛子(一味唐辛子・七味唐辛子)」「コショウ」「カラシ(マスタード)」「山椒」「花椒の粉」「ウイキョウ」「クミン」などがあります。
少量を食べる時に加えて使います。
加工品の薬味
既に加工されている食品を利用して薬味とするものもあります。
「梅肉」「海苔」「青海苔」「鰹節」「油揚げ」は、加工されたものを刻んだり細かくしたりペースト状にしたりして薬味として使います。単体で使うのではなく、他の薬味と組み合わせて使われることが多いです。
また、「桜海老」「しらす干し(ちりめんじゃこ)」「揚げ玉(天かす)」「とろろ昆布」は、そのまま使うか、フライパンなどで乾煎りして水分を飛ばして薬味として使われることが多い食材です。
外国の薬味
料理を食べる時に一味加えるというこの習慣は日本だけのものではありません。古くは中国の書物に「薬味」に当たるものが使われていたという記述があり、それが薬味と呼ばれるようになったということからも、薬味が日本だけの習慣ではないということが覗えます。薬味とよく似たもので「香辛料」がありますが、「香辛料」はどちらかと言うと保存が利き、調理中の味付けに使う調味料的な存在ですが、薬味は料理を食べる時に食べる人の好みで加減のできるものという汎用性があります。
ここでは、日本以外の国で食べられている薬味をご紹介したいと思います。
アジアの薬味
中華料理の薬味として有名なのは「花椒」「花椒塩」「香菜(コリアンダー)」などです。食べる時に使うという点では「ラー油」も薬味と言えるかもしれません。
日本と同じように「唐辛子」「松の実」「辛子」「ねぎ」などももちろん使います。はっきりした味の多い中国料理では、ピリッとしたアクセントになる辛いものが好まれているかもしれませんね。
また、同じアジアの韓国には、薬味と同じ役割を持つ「薬念(ヤンニョム)」という調味料があります。ヤンニョムは、韓国料理の定番のキムチやチゲ、ナムルの薬味として使われます。
その他、タイでもよく知られている「パクチー」という香草があったり、インドでもカレーに添える「チャツネ」という薬味があったり、とアジアでは薬味の存在は料理には欠かせないものだと言えるでしょう。
薬味はアジアだけではなく、ヨーロッパでもそれと同じ役割をするものはあります。「薬味」を英訳すると「spice」と訳されるように、ヨーロッパでは「香辛料」も「薬味」も「spice」として一緒くたにされてしまっていますが、日本で言う「薬味」的な食べ方はちゃんとあります。
例えば、ソーセージに食べる時に粒マスタードを添える、ローストビーフにホースラディッシュ(セイヨウワサビ)を添える、パエリアを食べる時にライムを搾って食べる、ホットドッグを食べる時にマスタードをつけて食べる、などということは、まさに「薬味」的な食べ方と言ってよいでしょう。「薬味」という言葉は使わなくても、薬味の食べ方は存在しているのです。